タイムドメイン型スピーカーの私なりの解釈


※図につきましてはタイムドメイン社 タイムドメイン技術と理論から引用させていただきました。




タイムドメイン社の創業者である由井さん(故人)が提唱した「タイムドメイン理論」は、私が理解するところでは “音の本質は周波数特性よりも時間軸での正確な再現にある” という思想に集約されます。
つまり、インパルス応答・立ち上がり・立ち下がり・過渡応答といった、音が「発生してから消えるまで」の時間挙動に生じる歪みを、可能な限り排除することを最重要視した理論です。

このアプローチはスピーカーだけでなく、アンプ、DAC、さらにはPCオーディオ環境にまで及び、システム全体で時間軸のズレを極小化しようとする点に特徴があります。

ただ、私が調べた限りでは、タイムドメイン理論を模したスピーカーの多くの記事やは、筒型あるいは卵型のスピーカー構造やグランドアンカーをとりいれたものでした。
確かに、同社が特に力を注いでいた分野がスピーカーシステムであり、伝統的な箱型では避けられない共振や定在波を抑えるための形状設計やグランドアンカーが注目されるのは自然な流れだと思います。

実際のところスピーカー製作の要点――共振の抑制、内部定在波の管理、ユニットの過渡応答、エンクロージャの影響――は、上図にほぼ集約されていて、それを実現するための方法が、筒型、卵型、グランドアンカーなどの構造のように思います。そのため筒型、グランドアンカーがついていれば、タイムドメイン型スピーカーとして扱うのではなく、やはり音で判断すべきだと考えます。


また、筒型や卵型のエンクロージャについては、「振動しにくい構造を持つエンクロージャ」として紹介されることが多いです。形状そのものが共振を分散し、内部の定在波を抑えるため、結果としてスピーカーの不要な響きを減らし、より余分な音が前面からのクリアな音を汚さないという考え方によるものです。

要するに・・・
コーンの動作起点を物理的に厳密に定義する構造を与え、かつ、コーン前面から放射される音以外のすべての音源要素――回折、漏れ、筐体の共振、背面放射――を徹底的に排除すれば、ユニットから放出される音は「コーンが描く波形」そのもの、入力信号に限りなく近い波形なるということではないでしょうか。(コーンやボビンのムービングマスが剛体で質量0と仮定した場合)

程度の差はあれ、このことを実現すべく設計されたのが、タイムドメイン社の製品と理解しています。


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