『電源について』
- 理想的なDC電源:
完全に低インピーダンスで周波数に依存しない場合、信号経路に影響を与えず、位相変化は生じません。また、逆起電流は電源に吸収されても電圧変動を起こさず、アンプの動作点は不変。
- 一般的な電源:
コンデンサ、チョーク、整流素子などで構成されるため、周波数に応じたインピーダンス カーブを持ちます。すなわちこれらの部品の特性に応じて、 特定の周波数で電源電圧が揺らぎやすくなり、信号回路に電圧変動として結合します。スピーカーからの逆起電流は電源へ「戻ろう」としますが、電源の周波数特性に応じて電圧変動が発生しアンプの動作点に影響します。フィードバック回路がある場合、電源由来の位相シフトがループゲインに影響し、出力される音の時間構造に反映されてしまいます。
理想電源では逆機電流を完全に吸収し、音楽の時間構造を乱さない。一方、一般的な電源では逆機電流の反作用が「電源の呼吸」として音に影響し、位相や質感に影響を与えます。また、電圧が高い設計は「電流の負担を減らし、時間の純度を守る」方向に働きます。逆機電流に対する電源の電圧変動も相対的に小さくなります。
『整流について』- 整流後の電源は「パルス状の充電電流」でコンデンサを満たすため、商用周波数の倍の周波数で強い電流成分が流れます。このとき電源インピーダンスは周波数依存で大きく変化し、電源電圧の揺らぎ(リップル)が発生します。
ダイオードと比較して整流管は電流供給が自然に制限されるため、電源インピーダンスの変化が「急峻」ではなく「緩やかなカーブ」として現れます。
『チョークインプットとコンデンサーインプット』
- コンデンサーインプット方式の特徴
構成:整流直後にコンデンサーを置き、その後にチョークや抵抗を入れる方式。
利点:出力電圧が高く得られる(整流後のピーク電圧近くまで充電される)。大容量コンデンサーを使えばリップルを大きく減らせる。部品点数が少なく、設計が簡単です。
- チョークインプット方式の特徴
構成:整流直後にチョークを入れ、その後にコンデンサーを置く方式。
利点:チョークが電流を一定に保とうとするため、リップルが少なく電源電圧が安定
コンデンサーへの充電電流が緩やかになり、ノーマルモードノイズを抑制できる。
A級アンプのように電流が常に一定に近い動作では非常に相性が良い傾向です。
『理想的な電源を作るには』
時間軸の正確さ(微小な過渡、位相安定、音楽の時間構造の保全)を最優先に、金銭面を度外視できる条件なら、A級動作の真空管アンプに合わせた「整流管+大型チョーク+高品質フィルムのチョークインプット電源」が有利です。充電電流が連続化され、100/120 Hzの大振幅パルスと整流スパイクが減り、低域~中域での電源インピーダンス変動が小さく、信号への位相揺らぎの結合を抑えられるためです。整流管はソフトなスイッチングで高周波ノイズが少なく、フィルム併用の自己共振を抑えたり、チョークとコンデンサの共振を制御すれば、時間ドメインのみならず周波数ドメインの滑らかさを維持できます。
一方、Class ABやトランジスターアンプのように大きな電流変動を伴う負荷では、コンデンサーインプット(大容量電解+ダイオード)のほうがステップ応答と電圧維持に強く、瞬間電流供給能力に優れます。ただし、この方式は狭い位相角の充電パルスによる電源ノイズと周波数依存インピーダンスの谷や峰が生まれやすく、時間軸の微細な安定性ではチョークインプットに劣る傾向があります。
私の環境では、大電流の必要なトランジスタアンプで理想的な電源を構成するのが金銭的に難しいので、ファインメットコアを用いて真空管アンプは「整流管+大型チョーク+高品質フィルムのチョークインプット電源を基本としています。また、DACのようなトランジスタアンプのような振る舞いの場合は簡易的なものはコンデンサーインプットとしています。
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