『オーバーサンプリング(OS)とノンオーバーサンプリング(NOS)』
- オーバーサンプリング:
周波数領域(sin波)の忠実さを優先 → 時間領域ではフィルタ由来のインパルス波形が変化する。 - ノンオーバーサンプリング:
時間領域の忠実さを優先 → 周波数領域(sin波)では折り返しや減衰が残る。
NOSは時間軸の純度を守るために時間軸以外の歪みを許容するとも言えます。そのため時間軸の正確性ではNOSが優位、周波数軸で定義するならOSが優位という構造になります。
『抵抗ラダー変換とデルタシグマ変換』
- 抵抗ラダー変換(R2R):
抵抗を「R」と「2R」の値でラダー状に組み、各ビットが直接電圧に現れる。
デジタル値をそのままアナログ電圧に変換する「直線的」な方式。
フィルタ処理がないため、プリエコーやリンギングはほぼ発生しない。
時間軸では「瞬間の忠実さ」が保たれる。 - デルタシグマ変換(ΔΣ):
デジタル信号を非常に高いサンプリング周波数に変換し、ノイズシェーピングで量子化ノイズを高周波に追いやり、ローパスフィルタで取り除く方式
プリエコー(信号開始前の小さな波形)やポストエコー(後に残響)が不可避。
時間軸では「瞬間の純度」が犠牲になり、応答が平均化される。
- D/A変換の構成
方式: NOS+R-2Rラダー
インパルス忠実: 補間フィルタを使わず、コード→電圧(電流)を即応で出力。
プリ/ポストエコーを原理的に排除。
群遅延最小: デジタル補間・長フィルタなし。遅延はラッチとスイッチのみ。
I/V変換: 低インピーダンス・広帯域・最小群遅延のトランスインピーダンス
電源: 低インピーダンス。周波数に対するインピーダンスが一定。
LPF:トランスの特性依存
『TDA1545A ファインメットトランスIVについて』
- ファインメットトランスについて
ファインメットトランスは、最新のナノ結晶材料を活かした高性能トランスであり磁器歪がほぼありません。また、コアロスもアモルファスの1/5以下です。そのためDACの信号を余すところなく「低歪み・広帯域・高解像度」で変換することができます。 - DACのSink出力について
Sink型電流出力は、電圧出力DACに比べて歪みが少なく、広帯域で忠実な傾向です。
Sink出力は「電流を流し込む相手」を必要とします。トランス一次側はインピーダンスが低く、電流を受け入れる性質があるため、DACの電流を自然に吸収できます。PCM1704もSink出力となります。 - トランスIVについて
オペアンプによるI/V変換は、帰還ループの働きによってどうしても時間的な遅延を伴いやすく、瞬間的な信号変化の純度を損なう可能性があります。これに対してトランスは、入力された電流を物理的に即座に磁束へと変換し、その応答は極めて直接的で時間領域の純度が高いのが特徴です。したがって、トランスI/VはDACが生み出す「瞬間的な電流変化」をそのまま変換することができます。 - TDA1545Aについて
マルチビットのDACの方式には大きく分けて「従来型のR-2Rラダー方式」と、Philipsが開発した「連続キャリブレーション方式」があります。TDA1545Aはこの『連続キャリブレーション方式』となります。
従来のR-2R DACでは、各ビットに対応する抵抗や電流源が固定されており、製造誤差や温度変化によって値がわずかにズレてしまいます微小信号の再現性に限界がありました。これに対して TDA1545A は、内部の「基準電流源」を高速に切り替えながら各ビットの値を生成する仕組みを採用しています。この切り替えは常時行われており、すべてのビットが同じ基準電流をもとに信号が生成されます。
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