エンクロージャー

 

※図につきましてはタイムドメイン社 タイムドメイン技術と理論から引用させていただきました。

スピーカーから音楽を再生するとき、スピーカーの構造が音質に与える影響は想像以上に大きく、タイムドメイン社の技術資料ではその本質を突いています。

 右の図(一般的なエンクロージャー)に見る3つの問題点

  1. エンクロージャー内の音がコーン紙を通して放射される
  2. エンクロージャー自体が振動し、その音が発生する
  3. エンクロージャー内の音が壁を通過して漏れる

これらの音は、いずれも時間軸がずれた信号として、コーン前面から放出される音に混ざり込み、結果として音像のにじみや定位の不明瞭さを引き起こします。

解決のためのアプローチとしては下記があげられます。書くのは簡単ですが実現することが非常に難しい内容です。

  1. ユニット背面から発生する音を可能な限り弱くする
  2. 振動しにくいエンクロージャーとする
  3. 遮音性の高いエンクロージャーとする


【1.ユニット背面から発生する音を可能限り弱くする。】
スピーカーユニットのコーン背面から発生する音(背面放射音)を減衰させることは、不要な反射や干渉を防ぎ、前面放射音の純度を高めるために極めて重要です。

音を減衰させるには、音の運動エネルギーを吸音材を摩擦させることで熱に変換する必要があります。吸音材は音波が内部に侵入しやすく、通過する際に内部で減衰しながら熱変換できる構造が求められます。また、特定の周波数で30%吸音する素材があるとするならば、70%は反射することになります。

主だった吸音材と吸音できる範囲、吸音効率を下記にあげます。(Copilot)

『吸音材の「反射」と「減衰」の関係』
スピーカーエンクロージャーや音響空間の設計において、「吸音材=音を吸うもの」と単純に捉えてしまうのは早計かもしれません。実際には、多くの一般的な吸音材は吸音率よりも反射率のほうが高い周波数帯を持っています。特に初期反射音においてはその傾向が顕著です。
 音は一度では消えない:反射と減衰の繰り返し
エンクロージャー内部では、音波が壁面に当たって初期反射を起こした後、別の位置に配置された吸音材に再び反射しながら徐々に減衰していきます。この「反射→吸音→再反射→減衰」のプロセスが繰り返されることで、最終的に音エネルギーが空間内で収束していきます。

『エンクロージャー内部表面の凹凸がもたらす拡散効果』
吸音材の表面が平坦でなく凹凸がある場合、音波は一方向に反射せず、**多方向に分散(拡散)**される傾向があります。これにより、特定の周波数帯に集中する反射を避け、より自然な減衰を促すことができます。これは、音響的な「死角」や「ホットスポット」を減らすうえでも有効な手法と考えます。

『吸音材の得意・不得意:コットンとフェルトの限界』
素材によって吸音できる周波数帯は異なります。たとえば、コットンやフェルトのような薄く柔らかい素材は、中高音域(1kHz〜4kHz)には効果的ですが、低音域(250Hz以下)に対してはほとんど吸音効果がありません。これは、低音波長が長く、薄い素材ではエネルギーを十分に吸収できないためです。

『吸音材の設置について』
吸音材を効果的に機能させるためには、音が吸音材を通過する距離をできるだけ長く確保することが重要です。これは、音が素材内部で多くの摩擦や反射を受けることで、より効率的にエネルギーが減衰するためです。
また、各素材の吸音特性(吸音しやすい周波数帯)を考慮して配置することが求められます。例えば、グラスウールは中高域に強く、フェルトは低域に一定の効果を持つなど、素材ごとに得意な周波数があります。これらを適切に組み合わせることで、広帯域にわたる吸音が可能になります。
さらに、反射音がスピーカーユニットに直接戻らないような構造的配慮も不可欠です。ユニット背面に反射音が集中すると、コーン紙の動作に干渉し、時間軸上の歪みや不要な共振を引き起こす可能性があるとともに、時間軸のずれた音がコーン紙を通り抜けて前面から放出されます。さらに、コーン紙の自由な動作を妨げないよう、吸音材の配置や固定方法にも注意が必要です。過度な密閉や接触は、ユニットの応答性や音質に悪影響を及ぼすため、適度な空間を設けたり柔軟な支持構造が望ましいです。

『低域の処理について』
低域の吸音は最も難しい課題だと考えます。なぜなら、低域は波長が長く、エネルギーも大きいため、一般的な吸音材では十分に減衰させることができないからです。
このような性質を持つ低域に対しては、構造的な工夫が不可欠です。特に有効なのが、「拡散構造」の活用です。

低域は定在波やレゾナンスを引き起こしやすい傾向があります。これらは音質を濁らせ、定位や時間軸の正確性を損なう原因になります。
そこで、音を乱反射させる構造を採用することで、音のエネルギーを空間全体に分散させ、特定の位置に音が集中するのを防ぎます。

『エンクロージャーを通過する音について』
スピーカー設計において見落とされがちなのが、「エンクロージャーを通過して漏れる音」のです。タイムドメインの技術理論でもこの点には触れられていません。
ユニットから発せられた音がエンクロージャーの壁材を透過して外部に放射されると、逆相であった場合、コーン紙前面から放出される音を消してしまいます。また、そうでなくても音質に微妙な濁りや定位の曖昧さをもたらす要因となります。
透過音の量や性質は、エンクロージャーの材質(特に密度や剛性)と音の周波数に密接な関係があります。(Copilotより)


素焼きは中高音での内部損失が大きい素材ですが、低域については素通りのようです。コンクリートは低域についてはある程度までの遮蔽の効果がみられる傾向となります。

次にアルミ素材とコンクリートの比較です。

アルミ素材でも厚みがあれば、遮音性は上がりますが単一素材の場合素材の持つ内部損失が低いため共振点が問題になる可能性があります。なにより肉厚の厚いアルミパイプは入手が困難です。

タイムドメイン社の製品が低域が弱いと巷ではいわれる理由がここにあるのではないかと考えています。

再上図に示した理論モデルを実現する方法は、実に多岐にわたります。吸音材の選定、構造の分割、異種材料の積層、拡散構造の導入など、どれも一長一短があります。

タイムドメイン 由井氏からは、「筒のなかで空気にブレーキをかけるように」とお教えいただいていました。その意味がある程度理解できた気がします。

エンクロージャーを検討するときに、遮音・吸音・拡散のバランスとコーンの動作をイメージしながら、現実的かつ効果の高い設計を目指しています。













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