Timedomain Light ―ポートからの漏れ音の対策



Timedomain Lightは、Timedomain社が世に送り出した最後のプロダクトであり、由井氏が長年追い求めてきた音の哲学が凝縮された、まさに集大成と呼べる製品です。

手に取りやすい価格帯でありながら、ジャンルを選ばずバランスよく鳴らしてくれる懐の深さが魅力。設置もシビアになりすぎず、部屋のどこに置いても自然に音楽が立ち上がるのは、Timedomain理論を忠実に実現しているためと考えます。

まだ私がTimedomain lightを市販のまま使っていた頃に、タイムドメイン社を訪問した際、Type Rのシールが貼られた特別仕様のTimedomain Lightを聴かせていただいたことがあります。あのとき感じた“明らかに市販品とは異なる”音の鮮度は、今でも強く記憶に残っています。

その体験がきっかけとなり、私は7~8台ほどのTimedomain Lightをに手に入れ、改良に取り組むようになりました。試行錯誤の中で学んだのは、あまりにも尖った改造をすると安定性が落ち、故障が増えてしまいます。そのため手元に残っているものは、外観は市販品とまったく変わりませんが、多少手を入れた程度となっています。

  • ユニット内部の固定方法の見直し
  • アンカー材質の変更
  • エンクロージャーの遮音・振動対策
  • ポートの拡張
  • アンプ部の電源強化
  • 入力部HPFの周波数定数の調整

原型を保ったまま改良を進めると、どうしても最後に残るのが“背面ポートからの音漏れ”です。ここをどう扱うかは、Timedomain Lightの性格を崩さずに音質を整えるうえで、避けて通れないポイントでした。アンプの入力部分のHPFを取り払ったりもしましたが、ユニットが底つきしたり、ポートから漏れる濁った音が気になり音楽どころではなくなりました。

そこで私は、『DIYで高品質なスピーカーの製作』で培った経験を活かし、背面ポートから漏れる音を抑えるための“マフラー”づくりに挑戦しました。

私のTimedomain Lightは60Hz付近でHPFが組まれているため、120Hzぐらいからなだらかに低音のレベルは低くなります、また手軽に設置できることもポイントとしましたので、手軽に入手でき素焼きの卓上植木鉢を筐体としました。この植木鉢の内部を3段構成で消音機構を組み込むことで、ポートからの不要な音を自然に減衰させる仕組みを作りました。

見た目はシンプルですが、内部では効果的にポートから出力される音のエネルギーが減衰して、Light本来の素直な再生を邪魔しない働き”をしてくれます。

『消音構造概念図』



市販品としての姿を保ちながら、少しずつ自分の手で整えていく。その過程は、まるで由井氏がこの製品に込めた思想の理解を深めていくような時間でもありました。
背面ポートの“マフラー”は、そんな試行錯誤の中で生まれた小さな工夫です。










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